Column

「ライフファースト」の視点を!
休養を習慣にする仕組みについて 【休養学コラム 第3回】

#3 ライフファーストの視点で、毎日に小さな仕組みを

片野 秀樹(カタノ ヒデキ)

片野 秀樹氏

博士(医学)

一般社団法人日本リカバリー協会代表理事。

東海大学大学院医学研究科、東海大学健康科学部研究員、東海大学医学部研究員、日本体育大学体育学部研究員、特定国立研究開発法人理化学研究所客員研究員を経て、現在は博慈会老人病研究所客員研究員、日本疲労学会 評議員、日本未病総合研究所未病公認講師(休養学)も務める。日本リカバリー協会では、休養に関する社会の不理解解消やリテラシー向上を目指して啓発活動に取り組んでいる。著書に「休養学:あなたを疲れから救う」(東洋経済新報)、「今さら聞けない 休養の超基本 疲労ゼロを習慣化する」(朝日新聞出版)など。


第5章|罪悪感を減らし、休みを継続するための考え方

休養を続けるうえで最大の壁は、時間のなさより、罪悪感かもしれません。休んだら遅れる。休んだら迷惑をかける。休んでいる自分だけが止まってしまう。そんな気持ちがあると、せっかく時間ができても休めません。

休養を「コスト」ではなく「投資」として捉え直すことが重要だと思っていただきたいです。フィットネス疲労理論では、パフォーマンスは「体力−疲労」で決まります。疲労が積み上がったまま成果を出そうとするのは、理論的に無理がある。つまり、休むことはサボることではなく、能力を発揮するための前提条件です。

さらに、持っておきたいのは「ワークライフバランス」より「ライフファースト」という視点です。仕事と生活を天秤にかけるのではなく、生活の中に仕事があると考える。自分の生活基盤が整っていてこそ、仕事も家事もケアも続けられます。自分のライフを削って成立する頑張りは、長くは続きません。

継続のためには、“休養のハードルを下げる仕組み”を持つことも大切です。たとえば、毎日15時に3分だけ席を立つ、子どもを寝かせた後に一杯だけ温かい飲み物を飲む、予定表にあえて「何もしない5分」を入れる、スマホを白黒表示にしてスクロールを減らす。こうした小さな仕組みは、意志力に頼らずに休める土台になります。

休みは、気合いで取るものではなく、設計して守るもの。そう考えられたとき、休養は特別なものではなく、毎日を続けるための技術になります。

さいごに|「一杯」の時間も、回復のスイッチの1つです

自分以外の優先事項が多い人ほど、休養には“許可”が必要です。その許可を与えてくれるのが、休養学という言葉と理論です。休養は、寝ることだけではない。止まることだけでもない。活力を回復・確保し、次に備えるための前向きな行為です。

もし何から始めればいいか分からないなら、まずは一日のどこかに「一杯のための5分」を置いてみてください。香りを感じる。温度を感じる。ひと口ずつ味わう。ほんの短い時間でも、自分のペースを取り戻すきっかけになります。大切なのは、休める人になることではなく、回復できる休み方を知っている人になること。その積み重ねが、明日の自分を少し楽に、そして豊かにしてくれます。

片野秀樹氏が温かい飲み物を片手に微笑む様子

【参考・出典】